没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「マリーナから突然ミノスを出たと連絡が来て、それ以来、一度も結局会えなかったから…何があったのかは、わたくしも知らないの。ご両親と何かあったと言うことしか…」

そうだったのね…
親友には何も言うこともできずに…ずっとあの『コルタナの涙』をどうしたらいいかわからず持っていたんだわ。

母の日記にはあったのだ。

『思わず忌まわしいこの魔石を持ち出してしまったけれどらどうしたらいいと言うのだろう。
これが王家にとっては喉から手が出るほど欲しいものであるということと、魔女からは然るべき時が来るまでは絶対に王家に渡してはならないと言われ、グランドンに託されているということしかわかっていないのだ』

今思えばそのしかるべき時とは緑の魔石をかの台座に嵌め込む時、ようするにクランドンの後継者として選ばれた女性が王の妻となるべき時なのだ。

『わたしはしかるべき時に果たすべき役割を放棄した。
親友の好きな人に嫁ぐわけにはいかないもの…。
この魔石をわたしが持っていてもいいのか?
怖いけれど、もうわたしはクランドンの人間では無いのだから王家に渡るよう手配してもいいのでは無いだろうか』

そんな葛藤が書かれていた。
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