没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「フィル…」

少しバルコニーに出て風に当たっていたら、後ろにハーヴィが立っていた。

今日も警備なのだろう。
制服を着ていた。

「ハーヴィ。お仕事、お疲れ様」

「キミが…レオン殿下の婚約者という噂は…」

眉を顰めて少し苦しそうに見えた。

「ふふ」

フィリシティは少し自嘲の笑みを浮かべる。

「わたし…どうしちゃったんだろう。田舎の貧乏伯爵令嬢だったはずなのに…レオン殿下なんて雲の上の方だったはずなのに…こんなに…今苦しいの」

「え?」

もしかしたらさっき少しだけもらったシャンパンのせいだろうか。
お酒がこんなにわたしを饒舌にさせてるのかな?

「くるしいって?」

「レオン殿下が…他の方に笑顔を向けるだけで…胸が苦しい」

「フィル…それってもう。恋してるってことだよ」

「え?」

ああ。遅かったか。
とハーヴィは思った。
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