没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「フィル。さっきから『ええ』しか言ってないよ」

「え?あ、ああごめんなさい」

小さいころから知っていた幼馴染の男の子が洗練された都会の貴公子になっていた…
というその事実にまだフィリシティはついていけずにいた。

『ええ』と言う言葉しか出てこない。

おどおどしたままだったフィリシティの手を取ったハーヴィはそのままエスコートし、フィリシティを王都で若者に人気だというレストランに連れて行った。
キラキラしたそのレストランでもフィリシティは人気メニューだというほろほろブラウンシチューとかためのパンをいただきながら上の空だった。

おごると言って聞かないので、ハーヴィに出してもらい、その後ハーヴィの提案で公園をそぞろ歩き、王都のはずれの方にあるもともとは木々が生い茂っていたところに少し手を加えて道をつくり、ところどころにガゼボをたててベンチを設置してある場所に行って初めてフィリシティはホッと一息つけた気がした。

そこは開かれた場所で、平民や下位貴族たちの憩いの場と化している。

フィリシティにとってはこちらの方が幾分か気が楽で過ごしやすかった。
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