没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「大分暖かくなってきたね」

お腹いっぱいだったにもかかわらず、ハーヴィが屋台で袋入りの丸い鈴カステラを買ってきたので2人でつまむ。

「ほんと。領地じゃすでに虫が這いだしてきているわ」

「あー。だろうね。それでマーシの丘で虫いっぱいつかまえて、メリッサに怒られるんだよな」

「まぁそれはハーヴィだけよ。わたしはそんなことしないもの」

「よくいう。僕よりいっぱいつかまえてたじゃないか」

クスクスと笑ったら、ハーヴィが言った。

「よかった。やっと笑った」

「え?」

「なんか。固くなってる気がしたから」

ハーヴィは鈴カステラを口にほおりこむ。
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