没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「そんなこと言ってくれるのはハーヴィだけよ。うわっ…ちょっと…」

リスが足許にわらわらと寄ってきて大変なことになっている。ハーヴィが鈴カステラの残りをポイっと遠くにほおり投げたら、リスはそちらのほうへみな走っていってしまった。

「ふふ。リスって単純。ところで、ハーヴィ。少しお願いがあって…」

本当の目的を忘れるところだった。
ハーヴィに会いたかったのはこのためなのに…

「何?」

鈴カステラの袋をぐしゃりとつぶしてまるめるとハーヴィはフィリシティに向き直った。

「あのね…。信用できる宝石商を探しているの」

「え?」

少しハーヴィの眉根が寄った。

「もしかしてまた?」

「ええ。恥ずかしい話だけど、父がまた借金を増やしてしまって…」
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