没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「フィル。いいかい。残念だけど僕はもうすぐ任務にもどらないといけない。一つだけ言っておくけど、絶対に人気のないところに行っちゃいけないよ。会場にずっと一人でいるのは大変かもしれないけど、人気のないところに男ありだからね。何があるかわからない。しかも今日のキミはみんなが狙ってる。約束だよ」

「わかったわ」

夜会で襲われた話はさすがの田舎者のフィリシティでも聞いたことがある。考えるだけで恐ろしい。そんなへまはしないと心に誓った。
ハーヴィの言葉にコクリとうなづいた。

「じゃあ。戻る前に1曲だけおどってもらえますか。レディ」

ちょうど1曲目が始まるところだったのだ。
夜会自体がはじめてなのに、ダンスなんてまったく…
3年前まで淑女の教育を受けていたからその時までの知識しかないのに…。

どうしようかと躊躇していたが、ハーヴィがそっと言った。

「大丈夫。昔を思い出して一緒にステップふめばいいだけさ」

昔を思い出して…そのフレーズでフィリシティの心はふっと軽くなった。
< 39 / 265 >

この作品をシェア

pagetop