没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました

ハーヴィはダンスを終えると、ハンナ・トンプソンのもとへフィリシティを送り届け、そのまま任務へと戻った。

そのあとハーヴィが近衛隊の隊舎で同僚たちから冷やかしを受けたのは言うまでもない。

何しろ、今までどんなに美しい令嬢に言い寄られようと見向きもしなかった男だ。
それはこの令嬢がいたからなのかと皆納得すると同時に、ではいったいかの令嬢は誰なのかと皆が質問攻めにする。

「誰だよ。あの令嬢はっ！おまえ隅に置けないな」

「今日は遅出の届を出していたから、まさかとは思ったけど」

「紹介しろよ。俺にも１曲相手させてくれ」

「おまえ、付き合ってるのか？」

同僚の質問攻めに近衛兵の制服に着替えながら答える。

「いや、まぁ…うん」

付き合ってると思われているなら思わせておけとハーヴィはあいまいに返事をした。