没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「こら、お前たち、任務に戻れ。夜会中に何かがあったらどうする?エドワーズは少し残れ」

上司の言葉に、近衛兵たちはおしゃべりをやめ、さっさと持ち場に戻っていく。

キャベンディッシュ卿は恐ろしく体躯の大きな男で、一般的な男性より背の高いハーヴィですら見上げるほどの大男だ。赤褐色の髪にエメラルドの瞳をした無表情の男だが、実のところは心根の優しい男であることをハーヴィは知っている。

「エドワーズ。今噂していたのが例の令嬢か」

「はい。そうです。彼女は信用できる宝石商を探しています。詳しいことを第三者の僕が言うことはできませんが、かなり困っているので、力になってやっていただけたらと…」

「わかった。では、夜会後に客間に連れてきてくれ。ここだと外野がうるさいだろう」

「はい。承知いたしました。ありがとうございます。では持ち場に戻ります」

ハーヴィはフィリシティとのダンスのふわふわした気持ちを引き締めて夜会の警備へと戻ったのだった。
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