没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
思わず、この場所に引き留めた自分に驚きつつ、さらにずっと女の手を地面に拘束したままだったくせに気づきもしなかった自分にも驚いた。

「ああ。悪かった。立てるか?」

「ええ」

女の手首の拘束を解き、手を引っ張りあげると、その場に座らせる。
手首を見て、よほど強く抑えていたのだろう。赤くなっていることに気づいた。

「すまない。痛いだろう?」

「え?ああ」

手首を見て、女はくるくるとまわす。

「大した事ないです。これくらい」

男にキツく組み敷かれ、手首を拘束されていたのに、余裕だといわんばかりの態度に面食らう。

強い…。

「それで?何に疲れていらっしゃるんですか?」

足を三角に立てて、ちょこんと隣に座り、こちらに顔を向けた。

うっ…
真正直な眼差しがそこにあり、少し戸惑いを覚えたが、その分こちらも正直になっていいのだという気分になり、彼は口を開いた。
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