没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
入ってみると、卿は謁見の間の床に跪いたまま、顔をあげた。
ずっとそうやって待っていたにちがいない。
そういう男だ。

「どうしたキャベンディッシュ?」

「殿下。謁見を賜り恐悦至極に存じます」

「よい。続けよ」

レオンは口上はとりやめるよう言い、続きを促した。

「はい。実は、兄のサイラスが折り入って殿下にお会いしたいと申しております」

「サイラスとな?」

はて?とレオンは考えた。
会ったことがあるだろうか?
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