没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「急ぐのか?」

「なるべく早いほうが良いと」

何なのか気になったが、おそらくキャベンディッシュ卿のほうは何も聞かされていないだろう。ただ、至急レオンとの謁見の場を設けてほしいと橋渡しを頼まれただけにちがいない。

「わかった。では、3日後だ。3日後のこの時間に参内せよ」

「御意」

今日から3日後のその日は、領地の視察ということでリッチモンドは休暇をとっており、王都には不在だ。
キャベンディッシュの代表との謁見については、リッチモンドには知られないほうがいいような気がした。
勘みたいなものだ。

「キャベンディッシュ卿。この件は他言なきよう。こちらでも隠密に処理する。謁見の間には卿がサイラスをそなたの客人という体で同行させよ」

「はっ。お心のままに」

キャベンディッシュ卿は最後まで礼儀正しく、謁見の間を去って行った。
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