没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました


「レオン殿下。何があったのです?」

執務室に入るなりローマンがあわてている。

王城の中でも変化があったようで、魔力を持たない者でも何かとても元気になったような気がすると、突然怠けていたものが仕事をまじめにやりはじめたり、まじめで働きすぎていたものは逆に、ふと自分の家族のことを考えて、今日は早く帰ろうと思ったりといつもとちがう事態になっているらしい。

「ついに戻ったんだ」

「戻った?」

「『コルタナの涙』」

ぼそりと告げると、ローマンは眼をまるくした。

「誠ですか?え?500年もの間どこにあるか見当もついていなかったのにまたどこから?降ってわいたのです?サイラス・キャベンディッシュが仕入れたものの中にあったということですね?」

ローマンは頭が切れる。サイラスと会ったあとにコルタナの涙が戻ったというのなら、サイラスが持ち込んだのだということは検討付けているのだ。
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