没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
殿下から滞在を長々と赦されているわけではない。あまり気は進まないが、殿下が望んでいることだ。はやく返事をもらって王都に連れて行かねば…。

「はい」

何事かと姉弟そろってこちらに不安そうな目を向ける。

「フィリシティ嬢に長期にわたる王城への滞在をお願いしたい」

「王城…ですか?」

少しの間があって、そしてしばらくの後、大きな琥珀色の瞳がより大きく見開かれた。

「そうだ。わけあって、理由は言えない。ただ、拘束や罰則などではなく調査のためだと言っておこう。これは勅命であり拒否は許されない」

ローマンは国王よりの書状を懐より出し、テーブルの上にバサッと広げた。
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