没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
中身を読み上げる。

フィリシティはその赤い上質の用紙をしばらく茫然とながめていたが、少し反論しようと試みたようだ。

「ですが、わたくしは伯爵領を長期にわたって離れるわけには…」

「ロジャーズ伯爵家の窮状はこちらも理解している。それを鑑みて、フィリシティ嬢が不在の間、管理人として王家の顧問を滞在させるとの陛下のお心遣いだ」

「王家の?」

眉を顰める。

「ああ。フィリシティ嬢に登城してもらうためにこちらもいろいろと調べさせてもらった。伯爵の監視も含めて管理させていただこう」

「監視…」

フィリシティの眉根が若干寄ったとローマンは思った。

「監視というのはあまりに…。問題はありますが、わが父にございます」

言い方を間違えたか…。
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