没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました

「失礼。言い方が悪かったようだ。伯爵への事業アドバイザーと言っておこう」

「アドバイザーですか？」

「ああ。今回アドバイザーとしてよこしたこの者は、王家の財務管理に携わっている王宮勤め人の中から厳選して選んだ者だ」

ローマンの横で立ち上ったその男性は深く頭を下げた。

「王城にて財務省に勤務しております、ザッカリーにございます。この度はロジャース伯爵さまへのアドバイスをおおせつかりました。伯爵領にとって良い結果になるよう精一杯務めさせていただきます」

真面目を絵にかいたような男性だとフィリシティは思った。
見た目は信用できそうな人ではある。

フィリシティはしばらく考え込むように眉根を寄せたままだったが、突然顔を上げた。

「勅命とあれば仕方ありません。王城に滞在いたします」

「姉さま！」

ハリーが焦るが、フィリシティは手で制する。