初恋カレイドスコープ
【過激】異常性癖
・第六章~第九章あたりの話です
・一人称凛視点
・過激です(首絞めプレイ・ハイポクシフィリア)
・玲一が凛にこの行為をするのは今回が最初で最後です
*
たとえば、唇でそこに触れて。
舐めて、吸って、たまに甘く噛んで。
長い指が中をかき回す。内側を軽く押しながら、私のいいところを的確に暴き、激しく責め立ててくる。
(いつもそうだ)
シーツを噛み、絶え間なく与えられる刺激に小刻みに腰を動かしながら、私は思う。
(私は《《される》》側ばかり。玲一さんはいつもいつも、私を善がらせるばかりで、私の方からは触れさせてくれない)
一応セフレなんて間柄なのだから、そっちの方もある程度は頑張りたくて、私だって恥ずかしさを堪えてネットで色々調べているんだ。女の方から男の人を悦ばせる方法だって、いろいろな種類があるみたいなのだけど。
うまくできるかは別として、私からも何かをさせてもらいたい。……自分の手や唇で、彼が悦ぶ様を見てみたい。
「なんか、上の空?」
「んっ、あ!」
くい、と指先が中で折れ曲がり、変わった刺激に腰が跳ねる。
玲一さんは私に覆いかぶさり、上から顔を覗き込みながら、快楽に耐える私の赤らんだ頬を愉快そうに眺めている。
「俺といるときに考え事? 本当、凛ちゃんも余裕出てきたよね」
「ちが、ぁ……そういうんじゃ、なくて、っ」
「どうしたの? 言いたいことがあるなら、言ってみてもいいんだよ」
言えるならね――と、器用に指を動かしながら、玲一さんは私の耳を軽く歯を立てて噛む。
舌先が耳の中に入って、ぐちゅぐちゅした音がダイレクトに響く。全身から愛液が溢れているみたいで、恥ずかしさに身体が熱くなる。
「あ、のっ」
結局気持ち良さに耐えられなくなって、私はなけなしの力を込めると玲一さんの身体をぐいと思い切り押しのけた。玲一さんは自分の唇を舌でぺろっと舐めながら、息を荒くする私の姿を微笑んで見下ろしている。
「なに」
「ひ、ひとつ、お願いが」
「いいよ」
唾を飲み込み、勇気を振り絞る。
「……たまには、私の方から、していいですか」
言いながら、私の視線は馬鹿みたいに素直に玲一さんの下腹部へと向かっていった。ウェストに有名なロゴが入ったグレーのボクサーパンツの中央は、何か別の生き物が隠れているように妖しく盛り上がっている。
玲一さんは少し目を丸くして、私の言葉の意味を考えていたようだけど、やがてニッと笑みを深くすると、
「初めて会った時は処女だったのに、ずいぶんえっちになったねえ」
と、指先で私の顎を撫でた。
(私をそうしたのはあなたじゃないですか)
言いたい気持ちをぐっと堪えて、私は頬を染めて目を逸らす。セックスはコミュニケーションだと、こないだ読んだ雑誌に書いてあった。だったら与えられるばかりじゃなくて、私からも彼に何かを与えたいと思うのは自然なことのはず。別に、私が特別変態なわけでは……。
「でもごめん。俺、されるの好きじゃないんだ」
くしゃくしゃと私の髪を撫でて、玲一さんは屈託なく笑った。
「あ……そうなんですか」
「うん。口も手もどっちも苦手。だからそんな無理しなくていいよ。今までどおりでいてくれれば」
……そっか。なんだか、ほっとしたような残念なような。
いや、正直言うとかなり残念だ。私だって人並みに男の人の身体に興味はある。いつも自分の中を無遠慮に踏み荒らしてくるそれを、間近で見て触れてみたい……と、本当は思っていたのだけど。
でもまあ、苦手だというなら仕方ない。それでも無理に触らせてくださいなんて言えるわけもないし、何より彼自身が今までどおりを望むというなら、私はそれに合わせるまでだ。
「……じゃあ、玲一さんの好きなのを、教えてください」
ぱたんとベッドに横になり、玲一さんの顔を見上げる。
玲一さんは――いつもなら、にこと笑って覆いかぶさってくるはずの彼は、なぜかぱちぱちと瞬きをして私の顔を凝視した。
「……玲一さん?」
「いや……」
口元を手で隠しつつ、玲一さんは目を逸らす。困っているような、戸惑っているような、なんだかちょっと珍しい顔。
「正直今のはぐっと来たけど、同じくらい心配になった」
「え?」
「そんな言葉、男に不用意に言っちゃだめだよ。世の中には凛ちゃんの知らない異常性癖が馬鹿みたいに溢れかえってるんだから」
呆れたようにため息を吐き、玲一さんはベッドで膝立ちになる。彼はそのまま私の脇の横へ、跨るように膝を進めると、
「本当に身体をめちゃくちゃにされて、二度と元には戻れなくなるかもよ」
と言って、笑いもせず私の首に両手で触れた。
指の腹が首をぐ、と押す。痛くはない。でも、少しだけ息がしづらくて、もう少し押されたら本格的に苦しいかな、といったところ。
玲一さんは静かな瞳で私を見下ろしている。私の呼吸が少しずつ浅くなっていく様を、黙って観察しているようだ。その瞳は、プレイの一環と呼ぶにはあまりにも無機質で、これでは、まるで……私を殺そうとしているみたい。
(……まさか、ね)
ゆったりと呼吸を続けながら、私は薄く目を閉じる。
自分の心臓の淡々とした音が身体の中で大きくなっていく。全身の血の流れが、少しずつゆっくりになっていく。なんだか不思議と、身体が宙に浮いているように思えてきた。どうしたんだろう。私、……なぜだかちょっと、きもちいい。
「――っは、っ!」
突然ぱっと手を離されて、頭に一気に血が流れ込んだ。いつの間にかぼやけていた視界が急に鮮明に色を増して、私はたった今目覚めたみたいに大口をあけて息を吸う。
今……なにが起きたの? 私はどうなっていたの?
摺り寄せた内腿がひどく濡れていて、ぐちゃぐちゃのぐちゅぐちゅになっているのはどうして?
ふ、と笑い声が聞こえて、ようやく玲一さんに気が向いた。ベッドの上で膝立ちになったまま、玲一さんは綺麗な顔で薄っすらと微笑んでいる。
「冗談だよ」
彼はそう短く言うと、今のがすべて嘘だったみたいに、私の頬に優しくキスをした。
おわり
・一人称凛視点
・過激です(首絞めプレイ・ハイポクシフィリア)
・玲一が凛にこの行為をするのは今回が最初で最後です
*
たとえば、唇でそこに触れて。
舐めて、吸って、たまに甘く噛んで。
長い指が中をかき回す。内側を軽く押しながら、私のいいところを的確に暴き、激しく責め立ててくる。
(いつもそうだ)
シーツを噛み、絶え間なく与えられる刺激に小刻みに腰を動かしながら、私は思う。
(私は《《される》》側ばかり。玲一さんはいつもいつも、私を善がらせるばかりで、私の方からは触れさせてくれない)
一応セフレなんて間柄なのだから、そっちの方もある程度は頑張りたくて、私だって恥ずかしさを堪えてネットで色々調べているんだ。女の方から男の人を悦ばせる方法だって、いろいろな種類があるみたいなのだけど。
うまくできるかは別として、私からも何かをさせてもらいたい。……自分の手や唇で、彼が悦ぶ様を見てみたい。
「なんか、上の空?」
「んっ、あ!」
くい、と指先が中で折れ曲がり、変わった刺激に腰が跳ねる。
玲一さんは私に覆いかぶさり、上から顔を覗き込みながら、快楽に耐える私の赤らんだ頬を愉快そうに眺めている。
「俺といるときに考え事? 本当、凛ちゃんも余裕出てきたよね」
「ちが、ぁ……そういうんじゃ、なくて、っ」
「どうしたの? 言いたいことがあるなら、言ってみてもいいんだよ」
言えるならね――と、器用に指を動かしながら、玲一さんは私の耳を軽く歯を立てて噛む。
舌先が耳の中に入って、ぐちゅぐちゅした音がダイレクトに響く。全身から愛液が溢れているみたいで、恥ずかしさに身体が熱くなる。
「あ、のっ」
結局気持ち良さに耐えられなくなって、私はなけなしの力を込めると玲一さんの身体をぐいと思い切り押しのけた。玲一さんは自分の唇を舌でぺろっと舐めながら、息を荒くする私の姿を微笑んで見下ろしている。
「なに」
「ひ、ひとつ、お願いが」
「いいよ」
唾を飲み込み、勇気を振り絞る。
「……たまには、私の方から、していいですか」
言いながら、私の視線は馬鹿みたいに素直に玲一さんの下腹部へと向かっていった。ウェストに有名なロゴが入ったグレーのボクサーパンツの中央は、何か別の生き物が隠れているように妖しく盛り上がっている。
玲一さんは少し目を丸くして、私の言葉の意味を考えていたようだけど、やがてニッと笑みを深くすると、
「初めて会った時は処女だったのに、ずいぶんえっちになったねえ」
と、指先で私の顎を撫でた。
(私をそうしたのはあなたじゃないですか)
言いたい気持ちをぐっと堪えて、私は頬を染めて目を逸らす。セックスはコミュニケーションだと、こないだ読んだ雑誌に書いてあった。だったら与えられるばかりじゃなくて、私からも彼に何かを与えたいと思うのは自然なことのはず。別に、私が特別変態なわけでは……。
「でもごめん。俺、されるの好きじゃないんだ」
くしゃくしゃと私の髪を撫でて、玲一さんは屈託なく笑った。
「あ……そうなんですか」
「うん。口も手もどっちも苦手。だからそんな無理しなくていいよ。今までどおりでいてくれれば」
……そっか。なんだか、ほっとしたような残念なような。
いや、正直言うとかなり残念だ。私だって人並みに男の人の身体に興味はある。いつも自分の中を無遠慮に踏み荒らしてくるそれを、間近で見て触れてみたい……と、本当は思っていたのだけど。
でもまあ、苦手だというなら仕方ない。それでも無理に触らせてくださいなんて言えるわけもないし、何より彼自身が今までどおりを望むというなら、私はそれに合わせるまでだ。
「……じゃあ、玲一さんの好きなのを、教えてください」
ぱたんとベッドに横になり、玲一さんの顔を見上げる。
玲一さんは――いつもなら、にこと笑って覆いかぶさってくるはずの彼は、なぜかぱちぱちと瞬きをして私の顔を凝視した。
「……玲一さん?」
「いや……」
口元を手で隠しつつ、玲一さんは目を逸らす。困っているような、戸惑っているような、なんだかちょっと珍しい顔。
「正直今のはぐっと来たけど、同じくらい心配になった」
「え?」
「そんな言葉、男に不用意に言っちゃだめだよ。世の中には凛ちゃんの知らない異常性癖が馬鹿みたいに溢れかえってるんだから」
呆れたようにため息を吐き、玲一さんはベッドで膝立ちになる。彼はそのまま私の脇の横へ、跨るように膝を進めると、
「本当に身体をめちゃくちゃにされて、二度と元には戻れなくなるかもよ」
と言って、笑いもせず私の首に両手で触れた。
指の腹が首をぐ、と押す。痛くはない。でも、少しだけ息がしづらくて、もう少し押されたら本格的に苦しいかな、といったところ。
玲一さんは静かな瞳で私を見下ろしている。私の呼吸が少しずつ浅くなっていく様を、黙って観察しているようだ。その瞳は、プレイの一環と呼ぶにはあまりにも無機質で、これでは、まるで……私を殺そうとしているみたい。
(……まさか、ね)
ゆったりと呼吸を続けながら、私は薄く目を閉じる。
自分の心臓の淡々とした音が身体の中で大きくなっていく。全身の血の流れが、少しずつゆっくりになっていく。なんだか不思議と、身体が宙に浮いているように思えてきた。どうしたんだろう。私、……なぜだかちょっと、きもちいい。
「――っは、っ!」
突然ぱっと手を離されて、頭に一気に血が流れ込んだ。いつの間にかぼやけていた視界が急に鮮明に色を増して、私はたった今目覚めたみたいに大口をあけて息を吸う。
今……なにが起きたの? 私はどうなっていたの?
摺り寄せた内腿がひどく濡れていて、ぐちゃぐちゃのぐちゅぐちゅになっているのはどうして?
ふ、と笑い声が聞こえて、ようやく玲一さんに気が向いた。ベッドの上で膝立ちになったまま、玲一さんは綺麗な顔で薄っすらと微笑んでいる。
「冗談だよ」
彼はそう短く言うと、今のがすべて嘘だったみたいに、私の頬に優しくキスをした。
おわり