初恋カレイドスコープ

 ひどい頭痛で目が覚めた。

 身体が痛い。腰が重い。喉がしびれて声が出せない。

 ここはどこだとあたりを見ようとして、すぐ傍からカタンと物音が聞こえた。座布団であぐらをかいてゲームをしていたらしい玲一さんが、ヘッドホンを外しながら私の方を振り返る。

「あ……凛ちゃん」

 身体を起こそうとした私を止め、玲一さんは軽く眉を寄せて、

「昨日はごめん」

 と素直に頭を下げた。

「調子に乗って、ちょっと無理させすぎたね。身体は大丈夫? 喉は?」

「……いたい、です」

「うわ、声が」

 ガッサガサのひどい声。玲一さんは慌てて立ち上がると、ペットボトルの水を持ってきてキャップを開けてくれた。

 冷たい水を喉に流しながら、少しずつ昨夜を振り返る。まさか本当に言葉の通りに、おかしくなるまで絶頂させられ続けるとは思わなかった。

 どれだけ抗っても与えられる快感。

 意思を無視して反応する身体。

 人としての矜持が強引に削ぎ落とされていく中で、恐怖と快楽がないまぜになり、私はただただ泣いていた気がする。

 大丈夫だと、怖くないと、耳元に唇を這わせながら、呪文みたいに繰り返される優しい声は妙に怖くて。

 今までのセックスとは違う、私の奥を無理にでも暴いて書き換えようとする一方的な行為に、最終的に私は負けて、ただ壊れたおもちゃみたいに低い嬌声を上げ続けた。

「……玲一さん」

「なに」

「昨日のは……怖かったです」

 昨夜やたらと撫でさすられたおへその下を無意識に押さえる。

 皮膚を隔てたずっと奥、自分では手の届かないところが、一晩明かした今でもまだじんじんと疼いている。はっきりと断言はできないけど、私の中で何かが変わった。彼の指が、唇が、私の底で眠っていたものを強引に目覚めさせてしまった。

 玲一さんはふっと笑って、私の顔を覗き込んだ。

「ああいうのは、嫌?」

 ……怖かった。それは事実だ。

 でも、嫌……だったのかな。改めて訊ねられると、うまく言葉が出てこない。

 うつむいたまま言い淀む私に、玲一さんは小さく笑うと、私の髪をくしゃっと撫でてこめかみにそっとキスをした。
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