初恋カレイドスコープ

 玲一さんもそれがわかっているのだろう。唇を求めながら必死に腰を振る私を眺め、彼はどこか上機嫌に口角をゆるく上げている。熱く濡れた瞳が色っぽい。てのひらが私の下腹部を撫で、慈しむようにトントン叩く。ああ、これ、本当になんなのだろう。これをされるとあっという間に、私が私じゃなくなってしまう。

「っ、あっ」

 突然上ずった声が漏れたのは、玲一さんの唇が私の喉元に吸いついたからだ。ちゅっと音を立てて軽く吸い上げ、一旦身体を離してから、彼は軽く小首を傾げると再び同じ場所へ唇を当てる。

「い゛っ……!」

 鈍い悲鳴は痛みによるものだ。とっさに両目を開くと、満足そうに瞳を細める玲一さんと目が合った。

「いま、……何、したんですか?」

「ん? 噛んだ」

「噛んだって、え、なんで」

 ひりひりと痛む箇所へそっと指を添わせてみる。離した指先にはほんの少しだけ赤い色がついていて、私が非難の眼差しで睨むと、玲一さんは肩をすくめた。

「さあ? なんでだろうね」

 悪びれもしない悪戯っ子の笑顔だ。

「っ、こんな変な傷、困ります。明日は交流会なのに」

「別にいいじゃん」

「よくないですよ」

「いいんだよ。これで」

 玲一さんの指先が猫をあやすように喉をくすぐる。

 それと同時に揺さぶるような腰の律動を再開されて、私はむっと口を結んだまま甘やかな刺激に耐えるしかない。奥を撫でるように揺すられるたび、ぴく、ぴくと身体が跳ねて、自分がこの人の前だとあまりにも無力だと思い知る。

「覚えておいてね、凛ちゃん」

 玲一さんは歌うように言う。

「凛ちゃんをこんな風にしたのは、他でもないこの俺だってこと」

「っ、あ、んぁ、……なに、言って、っひぁ」

「凛ちゃんのここをトントンしてやれるのも、たぶん俺くらいだよ」

「あ、……やめ、それ、あああ、っや、ぁ、……あああっ!」

「明日もさ、他の男で満足できなかったら、俺を呼んでくれていいからね。俺なら絶対に凛ちゃんを狂うまで気持ちよくしてあげられる」

 自分の嬌声が遠くに聞こえる。つながったところから漏れる水音は、私の頭がどれだけ彼に狂わされているかを示すバロメータだ。

「それはっ」

 突かれるたびに喘ぎながら、私はやっとのことで玲一さんの瞳を見上げ、渾身で言う。

「ルール、違反ですっ……!」

 恋人とはまったく別物。友達以上恋人未満。羽よりも軽い間柄。

 それがセフレの――私たちの間柄ではなかったか。

 ほんの一瞬、我に返ったみたいに目を見開いた玲一さんは、すぐにくしゅっと力なく笑うと黙って私にキスをした。

 それはさっきの深いものと違う、本当に唇が触れ合うだけの、中学生同士みたいなキスで――もっと深く、と続きをせがむみたいに見上げた私に、玲一さんは気づかないふりをして腰の動きを再開した。
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