ハイドアンドシーク
抑制剤で周期的なヒートは抑えられているものの。
最近になって、れんは突発的なヒートを起こすようになった。
そういう体質だったのか、それとも今まで何もなかった反動なのか、原因は分からないらしい。
幸いにもそれは長く続くものではなく、一時的なものだったが。
「っ、ん……うぅ」
どうやっても収まりのつかない熱に苦しむ姿を見るのも、もう一度や二度ではなかった。
本来なら介抱してやることくらいはできる。
できていた、はずだ。
そのとき、ちらりと掬うような視線を向けられた。
交わる前に逸らしながら、ドアに手をかける。
「なんかあったらすぐ呼べよ」
「……、……うん」
ヒートは、俺にはどうしてやることもできない。
入ってきたばかりの部屋を出ていく寸前、鼻腔をくすぐる匂いには気付かないふりをした。
ひとつ、こいつには言ってないことがある。
──俺も、誘発されかかっているということを。