ハイドアンドシーク
どう思われたか不安で様子をうかがうように見上げれば、するりと視線を逸らされた。
「なんかあったらすぐ呼べよ」
どうやらわたしのために部屋を空けてくれるらしい。
自室を明け渡した東雲さんはいつも、どこに行っているのだろう。
東雲さんの左耳のピアスを思い出す。
彼の瞳の色にそっくりのファーストピアスを。
この前のカーディガン然り、東雲さんが自分で選ぶような色じゃない。
それが意味していることは至極簡単で。
──瞳の色がわかるくらい、近づける人がいるんだ。
べつに彼女がいたって今さら驚かない。
東雲さんみたいな人、女の子がほっとくわけないし。
……東雲さんが女の子をほっとかなかったのは、ちょっと意外だけど。
この人の、東雲さんの世界でわたしは。
どれくらいの割合を占められているのだろう。
「うん」
そんなつもりはなかったのに、吐息まじりの声は微かに震えていた。