ハイドアンドシーク


「発情期じゃなくても微量のフェロモンは出てるんだよ。凡人のベータにはわからないけど、僕には──アルファにはそれがわかるってわけ」

「わ…、僕の匂いを辿ってきたってこと」

「そゆこと」


残念だったね、と腕を離される。

すぐに距離をとって、そこで初めて相手の顔をみた。


色素の薄い髪に瞳。長身ですらりと伸びた背筋。

厭世的にも楽天的にも読み取れる表情は、確実にわたしの好きなタイプではない……けれど。


まるで芸術品のような完成された美。


アルファ特有の圧倒的で怜悧なオーラを醸し出すその男が、西のトップ──葛西なのだと理解した。



「アルファにはオメガであること"も"誤魔化すことはできないよ。匂いは何よりも正直だ」

「……変態」


軽薄そうな目の奥が、嘲るように歪んだ。





「男のふりしてこんなとこいるほうが変態じゃない?

────ね、鹿嶋レンちゃん」



< 114 / 203 >

この作品をシェア

pagetop