ハイドアンドシーク
「発情期じゃなくても微量のフェロモンは出てるんだよ。凡人のベータにはわからないけど、僕には──アルファにはそれがわかるってわけ」
「わ…、僕の匂いを辿ってきたってこと」
「そゆこと」
残念だったね、と腕を離される。
すぐに距離をとって、そこで初めて相手の顔をみた。
色素の薄い髪に瞳。長身ですらりと伸びた背筋。
厭世的にも楽天的にも読み取れる表情は、確実にわたしの好きなタイプではない……けれど。
まるで芸術品のような完成された美。
アルファ特有の圧倒的で怜悧なオーラを醸し出すその男が、西のトップ──葛西なのだと理解した。
「アルファにはオメガであること"も"誤魔化すことはできないよ。匂いは何よりも正直だ」
「……変態」
軽薄そうな目の奥が、嘲るように歪んだ。
「男のふりしてこんなとこいるほうが変態じゃない?
────ね、鹿嶋レンちゃん」