ハイドアンドシーク
一瞬、頭がまっしろになった。
もしかしてあの人たちが、と邪推しかけたけれど。
「服で多少は誤魔化してるんだろうけど、骨格がどう考えても男じゃない。いくら東にも馬鹿しかいないとはいえ、よく数ヶ月もバレないでいたね」
詐欺師のような笑みを浮かべて、さっきまでわたしの腕をつかんでいた手をひらりと振る。
もう遅いけれど、触れられた部分を制服の上から強く擦った。
「僕は、」
「まだ男を装うつもり?それとも元から一人称は僕だったりする?いや否定するつもりはないよ、今は多様性の時代だからね」
素なのか、それとも挑発しているのか。
ひとつ確かなのは、この男はわたしに対してプラスの感情をもっていないということ。
それはすこし会話をしただけでも、視線や口調からひしひしと伝わってきた。
「……僕は、西に危害を加えるつもりはない。ヒート中は学校にも来ないし、薬もちゃんと飲んでる。極力迷惑はかけないようにしてる」
半ば、自分に言い聞かせるように。
東雲さんの顔が浮かんで、消えなかった。