ハイドアンドシーク
江藤くんの部屋を出てすぐ、なにかを言うでもなく東雲さんはどこかへと向かった。
ここでお別れしたかったけど、わたしもあとを追う。
そうするべきなのはさすがに明白だった。
東雲さんが前を向いているのをいいことにじっと見つめるのは。
見慣れない、広い背中。
それがあの"とーりくん"のものだって、わかっていてもなかなか結びつかなかった。
決して小柄だったわけじゃない。
むしろ小学生にしては身長もあったと思う。
それでもわたしの中の東雲さんは、ずっとあの頃の姿のままだった。
そのとき東雲さんが立ち止まった。
ぼんやりしていたわたしは反応に遅れてしまう。
「っ、と……すみません」
ギリギリだったけど、ぶつかってはないはず。
だから睨むような目を向けられたときにはびっくりした。
「……お前さあ、なんで俺には」
「ごめん。え、あ、ごめん。遮っちゃった」
当然きこえなかったので、なんだろうと不思議に思いながら首をかしげる。
「東雲さんには、なに?」