ハイドアンドシーク
「おいしい。美味しいです、すごく」
そ、と東雲さんが目を細めて椅子の背もたれに頬杖をついた。
そんな彼は今、わたしが寝ているベッドのすぐ脇に腰かけている。
やっぱり、どうしても気になってしまう。
わたしがヒートになっていることを東雲さんはわかってるはずだ。
「……今回は本来の、周期的なヒートとはいえ、ヒートには違いないんですけど」
その、と控えめに声をかける。
「大丈夫、ですか……?そんな、わたしの近くにいて」
すこし前から…かな。
東雲さんはわたしがヒートのときは部屋を空けるようになっていた。
はっきりとは言わなかったけど、彼はおそらくヒートの影響を受けていた。
誘発されかかっていたんだ、きっと。
だからこそわたしは申し訳ない気持ちでいっぱいだったし、避けられることも仕方ないって思っていた。
次の東雲さんの言葉を聞くまでは。
「ああ、なんか慣れた」
「ごふっ」
けろっと、そう一言。
あまりにもさらりと放たれたその言葉に、わたしは食べていた雑炊を喉に詰まらせそうになった。