ハイドアンドシーク
「な、なれっ、慣れたあ!?ッ、げほっ、」
「あーあー。ほら、水飲め」
言われるまでもなくグラスの中身を一気飲みする。
え、どういうこと?慣れたってなに?どういうこと?
誘発されなくなったってこと?
それともフェロモンは感じてるけど気にならなくなったってこと?
いやそりゃもちろん東雲さんが苦しまなくなったことはうれしい。それはうれしい。でもなんだろう。この、この気持ちは一体なに!?
ポップコーンのようにぽんぽん沸いては弾ける思考。
空のグラスから顔をあげて、じとっと目の前の東雲さんを見つめる。
「え、じゃあ、わたしっていま魅力ナイ……?」
「……さあな」
わたしは知っている、東雲さんがさあなって言うときは大抵当たっているということを。
つまり今のわたしは魅力がゼロ、その目にはただの体調悪いやつに映っているというわけで。
「はは……ま、まあいいですけど……東雲さんに欲情されなくたって、別にぃ」
「しようと思えばできるけど」
「その冗談、前も聞いた!」
どうか慰めないでほしい。
その気遣いはわたしの邪な心に効くので……。