ハイドアンドシーク
ライラ
ヒートが終わって間もなく、夏休みも明けた。
北国の夏休みは他の地域よりも短いぶん、寒さや雪への対策として冬休みが長くなるらしい。
生まれ育った土地柄、わたしは今まで雪が積もったところを見たことがなかった。
雪かきもしてみたいし、雪合戦もしたい。
雪だるまをつくって、なんなら雪にシロップかけて食べてみたい。
嬉々として語るわたしに、悪いことは言わないからやめとけと東雲さんは言った。
雪かきは下手すりゃ死ぬし、雪合戦や雪だるまは指が冷えて死ぬ、雪を食べたら腹が冷えて死ぬしシロップかけたところでたいして美味くもない、と。
聞きながら、東雲さんも雪にシロップかけて食べたことあるんだなって思った。
「……ニヤついてんなよ」
「いやあ、わたしもちっちゃい東雲さんと一緒に雪食べたかったなぁ。ちなみに何味かけたんですか?」
「肩凝ってるだろ鹿嶋、マッサージしてやるよ」
「いててて!そこ骨!グリグリしないでぇ…」
わたしと東雲さんは一緒にいた時間よりも離れていた時間のほうが長い。
空白の数年。
東雲さんはこの地で、どうやって、誰と、どんなふうに過ごしていたんだろう。