ハイドアンドシーク
「あれー奇遇だね? 鹿嶋レンちゃん」
ふたたびその男と会ったのは、休み明けテストも終わった頃、わたしが理事長室を出た直後のことだった。
後ろからかけられた緊張感のない声。
嫌な予感がしながら振り返ると、案の定そこには西の支配者である葛西くんが立っていた。
「ここで“ちゃん付け”しないで」
「えーなんで?僕なんか間違ったこと言ってる?」
「……それは、」
というか、と畳みかけるように言われれば、もはや口を挟む余地すらなくなってしまう。
「理事長も君がオメガで女の子だってこと知ってるの?もしそうだとしたら、君たちどういう関係?」
そこは突かれたらいちばん痛いところだった。
……見られるんじゃなかった。こんな男に。