ハイドアンドシーク


だから。

たどり着いたその部屋に、物は少ないながらすでに誰かが生活している痕跡があったとき。



「え……、? っ、あ」


わたしはようやく、はっとした。


うそだ。

なんで気付かなかったんだろう。



「まって。こ、れってつまり、そういうこと?」

「は?」

「わたし東雲さんと一緒に住むの?」



そんなわけないだろ、って否定してほしかった。

なんでよりによってお前なんかと、って。





「なに、今ごろ気付いたわけ」



ぱちり、と。


暗かった部屋に明るさが取り戻される。

まっすぐにこちらを見つめる瞳と目が合う。




それらを意識した途端、ひゅっと喉が鳴った。


< 18 / 203 >

この作品をシェア

pagetop