ハイドアンドシーク
「ええっと、僕にもいろいろあるんですよ」
「……いろいろ、ねえ」
結局、最初の約束どおり卒業までは在籍させてくれることになったけど。
あのまま退学させられてもおかしくなかった。
「まあ、どんな事情があるかは知らんが気を付けろよ」
「気を付ける?」
「あの理事長、たぶん学園の金を……」
そこまで言って、先生はハッとしたように言葉を止めた。
「いや、なんでもない……悪い、今のは忘れてくれ」
生徒に言うことじゃなかった、と自分を責めるようにぐしゃぐしゃと乱暴に髪を掻いた。
元々ボサボサだった頭がさらに乱れていく。
「面倒事にはもう首を突っこまねえって決めてんのに」
独り言のつもりだったんだろう。
小さくわたしの耳に届いた声はひどく疲弊していた。