ハイドアンドシーク




……遅いな、あいつ。



──いまコンビニ出ました!すぐそっち戻ります



見覚えのあるハイテンションな毛玉のスタンプと共にメッセージが送られてきて、もう30分近くは経っている。


それなのにまだれんは帰ってこない。

寄り道しているとも思えなかった。



いつもならさほど気にしないが、今日はやけに嫌な予感がする。


何度目かの電話が不在になったとき、それは確信に変わった。

れんの身になにかあったのだと。



また突発的なヒートを起こしたのか、それとも──


ちらりと見やった机には、れんの服用している薬が無造作に置かれていた。


オメガだけが国から支給される発情をコントロールする薬。


それを見ていると無意識に舌打ちが漏れ、椅子の背にかけていた上着を手に立ち上がったとき。

ドアが開く音がした。



「…れん?」


その声は、何かが倒れこむ音でかき消された。

玄関に向かうとそこには、肩を大きく上下させながらうずくまっているれんの姿があった。


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