ハイドアンドシーク
*
……遅いな、あいつ。
──いまコンビニ出ました!すぐそっち戻ります
見覚えのあるハイテンションな毛玉のスタンプと共にメッセージが送られてきて、もう30分近くは経っている。
それなのにまだれんは帰ってこない。
寄り道しているとも思えなかった。
いつもならさほど気にしないが、今日はやけに嫌な予感がする。
何度目かの電話が不在になったとき、それは確信に変わった。
れんの身になにかあったのだと。
また突発的なヒートを起こしたのか、それとも──
ちらりと見やった机には、れんの服用している薬が無造作に置かれていた。
オメガだけが国から支給される発情をコントロールする薬。
それを見ていると無意識に舌打ちが漏れ、椅子の背にかけていた上着を手に立ち上がったとき。
ドアが開く音がした。
「…れん?」
その声は、何かが倒れこむ音でかき消された。
玄関に向かうとそこには、肩を大きく上下させながらうずくまっているれんの姿があった。