ハイドアンドシーク




その人を紹介されたのは、高2の冬休みだった。




「恋、どこに行くの」

「図書館。勉強してくる」



その日、
家にはめずらしくお父さんもお母さんもいた。


家族3人揃うのは久しぶりだったけど、わたしはその空間にどこか居心地の悪さを感じて。

適当に理由をつけてしれっと家を出ようとしたら、待ちなさいと引き留められた。




「その前に、あなたに会わせたい人がいるの」

「……会わせたい人?」

「ええ。お母さんの会社の後輩よ」



意味がわからなかった。

なんでお母さんの会社の人と、わたしが?



訊きたいことは山ほどあったけど、なんて言えばいいのかわからなかった。

だってもうずっと、両親とは表面的なコミュニケーションしかしていない。


血の繋がった親子なのに、友達や他の大人よりずっと距離感がつかめなかった。





「恋」


結局断れず、リビングで座って待っていたとき。

ずっと黙っていたお母さんが口を開いた。


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