ハイドアンドシーク
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波は2時間そこらで引いた。
そうっと鍵を開けて、おずおずと顔を出せば。
ずっとドアの向こうで待っていたらしい東雲さんは、怒るよりも、怪我を心配するよりも先に、ただ黙ってわたしを強く抱きしめた。
それからリビングに連行、問答無用でベッドに座らされ、今に至る。
頬を張られたときに口の端が切れてしまったらしい。
もう血は止まってたけど、少し腫れている気がする。
東雲さんが濡れタオルを持ってきてくれた。
それを口元にあてられると、きゅっと身が竦む。
「つめたい」
「我慢しろって」
「ん……、」
「他、痛いとこは」
「……お尻痛い」
その発言に、場の空気が凍った。
「……あっ、違うから!そうじゃなくて、殴られて尻もちついたから、そこがちょっと痛むだけです」
「ほんっとふざけんなよ、おまえ」
「いひゃいいひゃい、ごめんなひゃいっへ」