ハイドアンドシーク
おそらく、最初はお母さんの頼みだから断れなくて来たんだと思う。
だって常識的に考えて、10歳も年下となんて結婚しようと思うはずがなかった。
それに見るからに優秀そうなその人は、わたしなんか選ばなくたって引く手あまただったに違いない。
それでも向こうは話を受け入れた。
わたしが高校を卒業したらすぐ、籍を入れて番になることを二つ返事で約束した。
運命の番だったから。
そこに、わたしの意思なんて関係なかった。
「これ以上一緒にいたら、たぶんマズいって、それも本能でわかった。ちっとも好きじゃないのに、好きになっちゃうって。もう、その人しか見えないくらいに」
自暴自棄になっていたわたしは、あーなんかもうどうでもいいやどうにでもなれって諦めてた。
オメガが幸せに生きていける道。
お母さんの言うとおりかもしれないって。
アルファに怯えることも、ヒートに悩まされることもなくなる。
それはたしかに、オメガにとって幸せなことだった。
──じゃあ、わたしの幸せは?