ハイドアンドシーク
「え、違う馬鹿になんかっ……ただわたしは東雲さんに迷惑かけたくなくて、」
「迷惑迷惑、ほんとそれしか言わねーな」
「なっ、」
「人の心配ばっかしてバカじゃねぇの」
その言い草に、さすがのわたしもカチンときた。
「……それのなにが悪いの」
「どれもこれも余計なお世話なんだよ。もっと他に考えることがあるだろうが」
「他に考えることってなに?それ以外に心配することなんてなにもない!」
「ふざけんな」
東雲さんが机の上に置いてあった抑制剤を掴んだ。
その瞬間。
わたしがぎくりと身を強張らせたことも、きっと東雲さんの目には映っていたはずだ。
「この薬。あくまでもヒートの予防策であって、さっきみたいにすでにヒートに入った状態じゃ効かないんだよな?」
疑問形なはずなのに、その言葉はあまりに確信めいていた。
「……うん」
「そもそもこれは周期的なヒート中のフェロモンを抑えるため、それだけに作られた薬だろ。それ以外のヒートに効く万能薬も、即効性のある特効薬もまだ開発されてない」
「そう、だけど……なんでそんな詳しいんですか」