ハイドアンドシーク


「……東雲さん、わたしのこと好きなの」

「だからそう言ってるだろさっきから」

「幼なじみとしてってオチではなく?」

「なあ、そろそろキレそうなんだけど」



オメガはアルファと結ばれるものだと。

今までわたしが出会ってきた人はみんな、運命の番なんてドラマや小説の中だけの話だって。


お伽噺の世界だって、他人事のように笑ってた。




オメガがベータと結ばれること。


わたしにとってのお伽噺はそれだった。

一生叶うことのない、自分だけの夢物語。



アルファの手の上から決死の思いで飛び降りたわたしは、これからも一人で生きていくって決めていた。

合わない薬を死ぬまで飲み続けて、身体がボロボロになる覚悟だってとうの昔にできていた。



覚悟。

そう、わたしだって覚悟は決まっていた。


だから、







「──後悔しない?」


口から出たのは全く違う言葉だった。


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