ハイドアンドシーク
考えていたこととはまるで真逆の、
「ほんとに、いろいろと面倒に巻き込むと思う。…それでも、後悔しない?」
東雲さんは迷いなくわたしを抱き寄せた。
「わかりきったこと聞くなって。今更、どんなことに巻き込まれたって後悔なんかねえよ」
反射的に見上げてしまったその顔は、どこも引きつってなんかいなかった。
わたしを誰よりも愛おしそうに見つめてくれるその瞳と目が合った瞬間、涙が溢れて止まらなくなった。
しとどに両目から溢れるそれは、今まで流してきたどの涙よりもあたたかく、心地よかった。
「だから、返事、聞かせろ」
「え、返事してないっけ?」
「してねーよ。で、どうなの」
変わらない、その深紅の瞳にとらわれる。
涙で滲んだ視界で彼は、じっと微動だにせずこちらを見つめていた。
嬉しさ、照れくささ。
これからに対する不安もたぶん少し。
だけどそれを大きく上回る多幸感。
きっとそれらが綯い交ぜになっている顔で、わたしははにかむように笑った。
「わたしも、東雲さんのことが好き」