ハイドアンドシーク


必死に抑えていた恥ずかしさがボンッと爆発した。



「やああもうそれそれ言わないでよお!」


するとそれよりもっと直接的な表現をされた。

その言葉が東雲さんの口から出たこと、いずれ彼とそうなるところまで想像してしまい、さらに顔がぶわっと熱くなる。


思わず乗り出しかけた身を堪え、わたしの反応を面白がっているその顔を下からじっとりと睨めつけた。




「…だって、わたしだって、怖いんだもん。あれ飲まないとどうなるかわかんない。オメガだって検査結果出たときからずっと飲んでたから……」

「ヒートならもう何回も見てるけど」

「……今までのヒートとはわけが違うでしょ」



抑制剤によって抑えられていたのはフェロモンだけじゃない。

相手に対する情欲さえも薬で無理やり抑え込んでいたから正直、その反動が怖かった。


……それでも、不幸中の幸いなのは、




「たぶんわたしのオメガとしての要素は、他のオメガよりもすこし薄いんだと思う」



誰かに直接言われたわけじゃない。

だけど10年近くオメガとして過ごしてきたわたしの中には、ほぼ確信に近いものがあった。


小学生のときにベータだと誤診されたのもおそらくそのせい。

周りの大人や親は、再診するまでわたしがベータであることを信じて疑わなかった。


お母さんは……認めたくなかっただけなのかもしれないけど。


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