ハイドアンドシーク
けど、
「価値があるかどうかは、僕が決めることですから」
「……そうかい。そりゃ悪かったな」
黒髪でボサボサの頭をかきながら、担任の先生が"3-A"のドアに手をかけた。
追いついたわたしも立ち止まる。
猫背だからわかりづらいけど、かなりの長身だ。
「……先生?入らないんですか?」
「まあ、ツイてるよ、お前。生徒にこんなこと言うのは情けねぇ話だけどさ、教師崩れの戯れ言だと思って聞いてくれや」
ちらりと向けられた視線はそれが最初で最後。
くすんだその瞳は、燻りそれでも小さな火種が残っている炭のようで。
「──"こっち"でよかったと思うよ、ほんとに」
それまでずっと皮肉まじりだった先生の言葉に、はじめて本心が垣間見えた気がした。