ハイドアンドシーク


「んなことも知らずに転校してきたのかよ。ジョーシキだろ、ジョーシキ」

「男子校で治安が悪いことは知ってたんだけど……それ以上は、あまりよく」

「いや治安悪ぃのはこっちじゃねぇし。向こうだし、向こう」



どうやら同じことを繰り返す癖のあるその人の言葉に、引っかかる。



「それ。こっちって」

「あん?」

「さっき先生も言ってたけど、なんのこと?」



するとまた別のクラスメイトが教えてくれた。

いいか転校生、と前置きをして。



「この学園はな、東と西に分かれてんだ」



見えるか、と。
引っぱるように窓際に寄せられる。

肩に触れられたとき、女であることがバレるんじゃないかと一瞬ヒヤッとした。


だけど相手はとくに気づいた様子もなく(それはそれでちょっとショックだった)、少し離れたところに見える建物を指差した。


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