ハイドアンドシーク
「あれが西棟。西の奴らの溜まり場だ」
じゃあ対になってるここが東棟なのかな。
ぼんやり考えながら、曖昧にうなずく。
そこにあったのは白と青を基調とした建物。
昨日の寮然り、まるで西洋の物語にでも出てきそうな佇まいだった。
いいか、と念を押される。
「くれぐれも西の奴らと馴れ合うんじゃねぇぞ。お前は東の人間だからな」
「うん……、え?」
ちょっと待って、いつの間に。
わたしには関係ないことじゃないの?
というか、これって派閥ってやつだよね。
そういうの苦手だから、できることならどっちにも属したくなかったんだけど……
厄介なのはこの学園、どうにもその2大派閥を主軸に成り立ってるっぽいこと。
ともすれば無所属は淘汰されかねない雰囲気だったし、話を聞くに、どうやら昨日の時点でわたしの所属は決まっていたらしい。
そう、それがあの来てそうそう見せられた大人数の殴り合い。
あれはただの歓迎パフォーマンスなんかじゃなくて、新入生という新たな人員をかけた戦いだったんだ。
次々と地面に倒れていく名前すら知らない男たち。
いきなりのことに呆然とするわたし。
そして最後まで立っていた男に攫われたのが、もうずっと前のことのように感じる──。