ハイドアンドシーク


「あれが西棟。西の奴らの溜まり場だ」


じゃあ対になってるここが東棟なのかな。

ぼんやり考えながら、曖昧にうなずく。


そこにあったのは白と青を基調とした建物。

昨日の寮然り、まるで西洋の物語にでも出てきそうな佇まいだった。



いいか、と念を押される。


「くれぐれも西の奴らと馴れ合うんじゃねぇぞ。お前は東の人間だからな」

「うん……、え?」


ちょっと待って、いつの間に。

わたしには関係ないことじゃないの?


というか、これって派閥ってやつだよね。

そういうの苦手だから、できることならどっちにも属したくなかったんだけど……


厄介なのはこの学園、どうにもその2大派閥を主軸に成り立ってるっぽいこと。


ともすれば無所属は淘汰されかねない雰囲気だったし、話を聞くに、どうやら昨日の時点でわたしの所属は決まっていたらしい。


そう、それがあの来てそうそう見せられた大人数の殴り合い。

あれはただの歓迎パフォーマンスなんかじゃなくて、新入生という新たな人員をかけた戦いだったんだ。



次々と地面に倒れていく名前すら知らない男たち。

いきなりのことに呆然とするわたし。

そして最後まで立っていた男に攫われたのが、もうずっと前のことのように感じる──。


< 27 / 203 >

この作品をシェア

pagetop