ハイドアンドシーク
「……とう、」
「どうでもいいけど、あんま親に心配かけさせるようなことすんなよ」
そう言われたとき、それまで感じもしなかった鼓動がたしかに一瞬、止まったのがわかった。
きっと何気ないひと言だったに違いない。
責めるような言い方でもなんでもなかった。
……だから、
「どうでもいいんだったら、ほっといてくださいよ」
自分から出た低い声にびっくりした。
胸も喉も、まるで燃えるようにあつい。
東雲さんが怪訝そうに眉をひそめ、立ちあがったわたしを見上げた。
「なに?」
「だから、東雲さんには関係ないでしょって。なにも知らないのに、勝手なこと言わないで」
……最悪だ。
ほんと、サイアクだ、わたし。
しまったと思っても、自己嫌悪に陥っても。
言ったあとではすべてが後の祭りだった。