ハイドアンドシーク
「なに、やってんの。すげー音したけど」
すぐに傍まで来てくれた東雲さん。
わたしの上半身を起こしてくれた彼と、そのまま至近距離で目が合った。
揺らぎのない火焔を閉じ込めたような瞳。
その奥に映っているのは
──縋るような顔をした、わたしだった。
「おい、どした。どっか怪我したか?」
わたしの様子がおかしいことに気づいたらしい。
外されたもう片方のイヤホンから、かすかに男のひとの声が聞こえた。
もしかしたら誰かと通話中だったのかもしれない。
咄嗟に東雲さんから身を引く。
「だ、いじょうぶっ……大丈夫、だから」
気にしないでって言おうとしたのに。
もっと距離を取るより先に、手首をつかまれた。
わたしのよりずっと大きくて、長い指は見た目よりも骨ばっていて、男のひとの手だと思った。
「なんも大丈夫じゃねーだろ、んな泣きそうな面して」
「っ…やだ、そんなことない」
「……なぁ鹿嶋、そんなに俺は信用できねーの?」