ハイドアンドシーク


うわあん、と小さな子供のように泣きじゃくった。


ずっと、誰かにこうしてほしかった。

ただ、ぎゅっと、抱きしめてほしかった。


家を出てからずっと張っていた……ううん、家にいるときからキリキリと張っていた緊張の糸が。


ようやく、ぷつりと切れた気がした。



声を上げて泣き続けるわたしに東雲さんは何も言わなかった。

何も言わずに、いつまでもわたしの背中をさすってくれていた。


手首をつかんでいたはずの右手は、いつの間にかわたしの投げ出していた手の上に重ねられていて。



「れん」



そのとき、ようやく気づいた。


変わってしまったのは、わたしだった。



東雲さんと過ごした日々はただの記憶じゃない。


あれは、あれはわたしの大切な



────思い出、だった。




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