ハイドアンドシーク
ニコラシカ
鹿嶋恋突発的大号泣事件。
……から、数日後の休日。
東雲さんがコンビニでお昼を買ってきてくれた。
「鹿嶋、幕の内とのり弁どっちがいい」
「え、と……東雲さんはどっちがいい?」
「俺はお前に訊いてんだけど」
呆れたように渡されたのは、幕の内弁当だった。
寮のレンジで温めたばかりなのか、掌にじんわりと熱が伝わってくる。
「ありがとう、ございます。……いただきます」
横で東雲さんがのり弁を食べ始めたので、わたしもお礼を言ってお弁当をいただくことにした。
「あの、ね。しののめさん、」
言葉を慎重に選んでもたついていると。
なに、と意地悪っぽく返してくる。
「嫌いなもんが入ってたからって泣くなよ」
「な……っ、違いますよ!あれは、……あのときはちょっと……、弱ってたっていうか」
わたしだって別に泣き虫なわけじゃない。
むしろ人前で泣いたのはあの日──かくれんぼで閉じ込められたとき以来だったもん。
ずっと、……我慢してたんだもん。
それを弁解させてほしかったけど、わたしが説明すると言い訳にしか聞こえなくなりそう。