ハイドアンドシーク
自分の役目を思い出したように心臓が動き出す。
ドクンドクン、ありえないほどに激しく。
封印していた記憶が。
今までの、どの瞬間よりも鮮明によみがえった。
「っ、とーりくん」
わたしがそのひとの──彼のファーストネームを馴れ馴れしく口にしたからだろう。
ピリ、と。
一瞬にして場の空気が凍りつくのを肌で感じた。
さすがに訝しく思ったのか、彼が伏せていた瞼を持ち上げたとき。
ああ、やっぱり、と。
わたしは安心したような──絶望したような、よくわからない気持ちになった。
「……おまえ、」
あの頃から随分と低くなっていた声に。
変わらない、その深紅の瞳に。
わたしはふたたび、囚われる。