ハイドアンドシーク
「……"抑制剤を服用していても無意識のうちに意中の人の匂いを求めてしまうのはままあること"」
画面には、それまでまるでフィクションのように感じていた第2の性についてが書き連ねられていた。
オメガは、本当に存在したのか。
何気なくそこに書かれてあったことを復唱すれば、視界の端でれんが露骨に慌てた。
「い、意中の相手っていうか、この状況でいちばん安心していられるのが東雲さんってだけでっ」
「いやわかってるけど」
「さいですか……」
「それよりも」
言いながら、入口の壁伝いにある照明のスイッチに手を伸ばす。
ベッドライトのささやかな灯りだけだった室内から闇が去り、そいつはほっと肩の力を抜いた。
「れんお前、ベータだったろ」
「誤診だったんです。なんかおかしいなって思ってもっかい受け直したら、オメガでした」