ハイドアンドシーク



その日は朝から身体がだるかった。

東雲さんが持ってきてくれた体温計で熱を測ってみると、37.5℃。微熱だった。


間違いない。ヒートだ。



「東雲さん、わたしに欲情する?」

「しようと思えば」


この女たらしが。

聞かなかったことにして、言い方を変える。



「今のわたし、どう見えますか」

「…体調悪そー」


フェロモンさえ出ていなければ、ヒート中のオメガはただ具合が悪そうに見えるだけらしい。

ひとまず誘発の心配はなさそうだった。


久しぶりに授業に出るという(真偽不明)東雲さんをいってらっしゃいと見送ったあと。

ぼふん、ベッドに倒れて目を瞑った。


起きていると余計なことまで考えてしまいそうになる。

だからヒート中は極力、眠るようにしていた。

幸いわたしはいくらでも眠れる体質だから、心置きなくお昼寝もできちゃうのだ。


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