ハイドアンドシーク
だけどその日はどうしても眠れなかった。
ヒートが始まってから数日。
短いようで長かった発情期も終わりかけていたその日、セミファイナルならぬヒートファイナルがわたしを襲った。
それまで収まっていた微熱のような症状がここにきてぶり返し、眠れそうなのになかなか寝付くことができなくて。
そのうち静寂に満ちた暗闇に包まれていることにも、どこか落ち着かなくなってくる。
もぞもぞしていたからか、起こしてしまったらしい。
「熱、下がんねーの?」
背中側からかかってきた声にびくりとして、振り返る。
暗がりの向こうに東雲さんが身を起こしているのがぼんやりと見えた。
「ごめんなさい。起こしちゃいました?」
「別に。で、具合は」
「あー……まあ、ぼちぼちですかね。ちょっと熱っぽくて、頭がぼんやりするくらい」
すると東雲さんの影が動いて、部屋の奥へと消える。