ハイドアンドシーク
「時々敬語抜けるよな」
「あ、ごめん……なさい、嫌でした?」
「嫌もなにも、タメだろ俺ら」
「だって、ずっと歳上だと思ってたんだもん」
いや、当時は敬語なんて使ってなかったけど。
東雲さんと再会したとき、わたしは前までのように接しちゃいけないと咄嗟に思った、から。
「とーりくんとーりくん、て。あの頃は素直で可愛かったのにな」
「なんでですか。今も素直で超可愛いでしょ」
「もう二度と呼ばねーつもり?」
「……またすぐに離ればなれになっちゃうんですよ。情が移ったら困るじゃないですか」
「だから犬猫みたいに言うなって」
名前を呼んだら相手を縛り付けてしまう。
わたしも、いつどうなるかわからない身だ。
東雲さんに悲しい思いをしてほしくない。
……なんとも、思わないかもしれないけど。
「れん」
「だぁから、名前──…っ、」
ベッドの中に引き込まれる。
東雲さんの使ってるベッドのほうに。
わずかに甘い匂いを感じたと思ったときには、わたしはすでに横になる彼の腕のなかに収まっていた。