ハイドアンドシーク
「…さっきの話きいてた?ていうかわたし今ヒートなのわかってます?」
「襲わねーよ」
「え?」
「俺はお前を襲わない」
もう少しで手が出そうになった。
そんなにわたしには魅力がないのかってビンタかますところだった。
あれもしかしてヒート終わってるのかな。
だとしたらこれはただの風邪?
でも、そんなわけない。
これはれっきとしたヒートで、東雲さんがいま雑に抱き枕にしているのは発情期を抑えたオメガ。
「もー…知んない。あてられても知ーらない。わたし一切責任取りませんからね、どうにかなっても自分でなんとかしてくださいよ」
返事の代わりに。
本当にその気なんてなかったのか、下心のない手がわたしの髪をぐしゃぐしゃと撫でる。
そのうち東雲さんが眠ったのがわかって。
わたしはその胸元に、額を押しつけた。
「……ほんと、ずるいひと」
ベッドサイドの灯りはつけられたまま。
東雲さんの腕のなかでそっと瞼を閉じる。
寄り添った身体から伝わる体温と、匂いと、鼓動とが。
驚くほどすんなり、わたしを眠りの中へと誘った。